晶の日記

見た展覧会や手芸など。時々民藝。

大山崎山荘美術館 「ウィリアム・モリス展」

6月の晴れた日、京都にいたので大山崎山荘美術館へ。

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大山崎山荘は実業家・加賀正太郎が自ら設計、デザインして建てた英国風の山荘で、1996年に美術館となり、アサヒビール創業者の山本爲三郎の収集したコレクションが中心です。山本氏が応援していた民藝の作家の作品や、モネの睡蓮が代表的な収蔵品で、山荘の方は企画展の他、民藝の作品が常設展示され、安藤忠雄設計の地下に作られた新館には睡蓮が展示されています。

私はこの美術館が好きで、関西在住時は度々訪問しておりました。安藤忠雄さんの建築を初めて見て体感し、サイン入りのご著書「建築を語る」をその場で買い求め熟読したり、ルーシー・リーの作品を初めて見たのも15年くらい前のこちらの山荘だったり、アメリア・アレナスさんの鑑賞会に参加し感激したのもこちらでした。久しぶりに訪ねましたが、やっぱり素敵でした。外観も格好いいですが、細部まで凝った内装や室内設備、デザイン、広々と緑豊かなお庭、テラスから淀川を一望する眺め…やっぱりいろいろ最高。

 

ウィリアム・モリス―デザインの軌跡」
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 (画像は大山崎山荘美術館HPより)

「役に立たないものや、美しいと思わないものを、家に置いてはならない」というモリスの言葉が展示の最初にあって、いや本当にそうだよね…と思いながら、でもそんな風に選択せずに生きてる無自覚な自分を省みることから始まりましたが、動植物が素敵にデザインされた壁紙やファブリックを眺めているとこんな美しさにこだわった生活へ憧れが強くなっていきました。山荘の雰囲気にも合っていて、住生活って大切だなぁと改めて感じました。

 

有名な《いちご泥棒》
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いつ見ても小鳥の表情が愛らしく可愛い図案ですが、配色やデザインで落ち着いたシックな感じです。インディゴ抜染の藍地に赤や黄色を重ねた凝ったもので、しかも当時のインディゴの深い青色は天然染料のみから得られ、一般的な合成染料からは得られない色だったとので、モリスの気合いと努力を感じました。他にも多くの壁紙の展示があり、一部の図案はインテリア用として売ってもいるようです。

見事な刺繍のファブリックも多くあり、キャプションに「刺繍はもともと男女問わず行われてきた手工芸で、中世社会においては絵画や彫刻と同等の地位にあった」とある通り、芸術の域に達しており、どれだけの時間と手間がかかったのだろうかと素直に感動しました。

モリスについて書かれた分厚い本もずいぶん昔に読みましたが、すっかり忘れてるので参考資料を購入。写真がいっぱいなので眺めるだけでも楽しく、モリスの家も載っていて興味深いです。
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2階の小さい部屋で常設の民藝コレクションが少しありましたが、さすが支援者だけに厳選された素晴らしい作品をもってらっしゃると思います。特に黒田辰秋の《耀貝螺鈿茶入》が美しすぎて、またいつか見たいです。私は河井寛次郎は強烈に感じててあまり好きな作品はないのですが、こちらで見た作品は穏やかで初めて好きな印象を受けました。

 

モリスも民藝も山荘も、普段の生活に美しいものをという目線が同じで、生活に寄り添った健全な美しさを感じ、清々しかったです。

2018年7月16日(祝)まで。

 

 


 





 

「長谷川利行展 七色の東京」府中市美術館

普段Twitterで展覧会の情報とか感想とかを見ています。府中市美術館の「長谷川利行」展はとても好評でしたが、画家のこと知らないし府中遠いし…と完全スルーしてました。

でも、先日京都行った際、若い時から良くしていただいている喫茶店でマスターご夫婦にオススメいただき、一緒にスマホで画像を見ていたら実物を見たくなり、府中まで行って来ました。昨年末は同じ流れでオススメいただいて熊谷守一展へ行って感激したので、こちらも見ておくべき!って思ったので。

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絵は独学、家はなくて簡易宿泊所を転々とし、最後は路上で倒れ養育院で49年間の人生を終わる…。と書いてしまうと悲壮な感じもしますが、描かれた街の景色は人で賑わっていて、描かれた人も生き生きしていて、活気があり幸せな感じがします。そして、彼の絵を評価して応援してくれる人もいる。きっと、彼の人柄は一緒にいたくて、応援したくなるような魅力があるお人柄だったんだろうなと思いました。でもそんな幸福で賑やかな風景を切り取れるくらい、客観的な眼を持ち、自分を知っていたのではないかとも思う。

展示を見ただけではわかりませんが、これから図録を読み、また絵を眺めるのが楽しみな画家です。


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「琳派ー俵屋宗達から田中一光へー」山種美術館

山種美術館琳派俵屋宗達から田中一光へ」を見てきました。

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琳派って京都から発生した綺麗な絵で、宗達光琳、抱一とか…としか認識がなく、こんなに多くの人の心をつかんでいるのはなぜ?という疑問に答えてくれた展覧会でした。

宗達光琳→抱一は、世代が違って、流派も関係なく血縁もない。琳派は先人を私淑して、その作品を自らで発展させて継承していった点で他の流派とは異なり、その影響力は広く及んでいる。ということが分かり、有名な歴代の画家にも琳派の影響が見出せたり、戦前から日本のデザイン界の先頭を駆け抜けていった田中一光さんも琳派のエッセンスを吸収して自らのポスターをデザインされたりしていたそうで!

琳派の影響力の大きさを初めて理解できた展覧会で、行って良かったです。

修復完了してお披露目された、伝俵屋宗達《槙楓図》屏風

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この田中一光さんの自伝おもしろかったです。図録の大きさも軽くてちょうどいいですね。
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日本民藝館 「柚木沙三郎の染色」

私は21歳くらいから民藝ファンです。最初は芹沢銈介大好きで、カレンダーや大判のハンカチみたいなの(お弁当を包んでた)など、いろいろ買い集めてました。倉敷のお店とかで「風」と染め抜かれた暖簾を見たりするとすごく憧れたものでした。実際、自分の家には飾るところはないですが。

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柚木さんは芹沢さんのお弟子さんで、なんか似てるんだけど、全然違う?って認識でいました。柚木さんは大原美術館に就職して芹沢さんの作品を見たことがご縁となり、染色の道へ進まれたとか。今回初めてじっくり作品を見て、力強くてのびのびしていて、絵じゃなくて模様なのがすごくいいなと思いました。色も独特で、アフリカなどの民族的なお面や道具と並んで展示されているのがとっても調和していて、その存在感も見ていてとても楽しかったです。

ご本人が日曜美術館で、「うれしけりゃいいんだよ。うれしくなくちゃ人生じゃない」とか「毎日おもしろいからやる」「人が喜んだらこっちもうれしい」っておっしゃられていて、この作品たちはうれしさとか喜びから生まれてるのか!と思ったら、いいもの見たなーって思いました。これが仕事とか働くとか人生で大事な心なんだなと思いながら。

 

そして必ず寄ってしまう売店で買ったもの。河井寛次郎のシール可愛すぎる!ちょっといい雰囲気でお手紙書きたいとき用に因州箋のレターセットと買いました。

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また、出品されていた作品の数点が岩立フォークテキスタイルミュージアムからでした。つい先日見に行ったばかりだったのでなんかうれしくなりました。柚木さんは岩立さんの学生時代の先生だったそうです。そのご縁が今も続き、お互いのライフワークでも結びついているとは本当に素敵。生きることの豊かさを感じた展覧会でした。


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半・分解展

「半・分解展」、すごくおもしろい展覧会でした。


前回はTwitterで様子を見ていて気になりながら行けず。。。今年は伺えました。テーラーで修行し、現在はモデリストの長谷川さんが200年前の洋服や、軍服、スーツなどを半分分解して、パターンを起こして再現する、そしてその内容を展示するという大変マニアックな展覧会。面白くない訳はないし、実際にすごく面白かった。再現したサンプルはサイズ展開されて複数準備され、試着も可能。長谷川さん自らがアイロンを使って技術的な技を見せてくれたり、観客をモデルに着用状態を解説してくれたりと、出し惜しみない演出に感動でした。

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私も昔パタンナーだった時期があり、軍服やジーンズ、チノパンツなど商品をバラしてパターンの研究をしたものだと懐かしくなり、一方でそれより断然精度が高いし展開が見事なため尊敬でした。

何よりも、資料としても貴重な昔の洋服を分解してしまい、研究結果を多くの人に広く提供していく姿勢に器の大きさを感じました。

長谷川さんの今後のますますのご活躍が楽しみです。


私もまたパターン作りたいな!


出光美術館「宋磁 神秘のやきもの」

間違いなく今年の私の展覧会ベスト10には入ると見る前から確信していた展覧会。

出光美術館「宋磁」
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率直な感想ですが、出光美術館って、なんて素晴らしく美しいものをこんなにたくさん所有してるんでしょう!東洋陶磁美術館もすごいですが。
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青磁白磁の地域ごとの特色も勉強になりましたが、美しい李朝白磁も元々は中国伝来で、やはり古代からの大国だった中国の圧倒的な力を感じました。中国は唐三彩など華やかな焼物のイメージでしたが、宋磁の優雅な美を見て、あまりの綺麗さに感動でした。そしていろんな優れた焼物がありますが、やはり、きらびやかに絵付けされたものより、単色で、陰影での文様やさりげない絵付けのものが好きだなと自分の好みも確信しました。

いつも想像以上の収蔵品の質と企画、分かりやすい展示で、出光美術館ってやっぱりすごい。

 

この地図欲しくて買いました。

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「大名茶人 松平不昧公」三井記念美術館

三井記念美術館「没後200年 大名茶人 松平不眛―お殿さまの審美眼―」を見に。

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鳥取へ行った際に松江も訪ねたことがあり、松江といえば不昧公、大名でありながらお茶が好きっていうことは印象に残っていて、こちらのポスターを見て、思い出して気になりました。

最近は今更ながら司馬遼太郎歴史小説にはまっているので、大名とお茶の組み合わせが気になりました。戦国大名でお茶って、信長も織部もと思って。

この展覧会は閉館1時間前に入館しましたが、思ったより広くて終わりに近づくにつれどんどん素敵な品々が出てきて、最後の展示室は閉館時間になってしまい、さーっと眺めて終了。残念でした。

長次郎や光悦も出てきて、いいものたくさん持ってたんだなと思いました。

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収集品を「古今名物類聚」として分類して自ら書き残し、自らも禅学を修め、茶の湯を極め、書画をたしなみ、自分の美意識で茶道具をプロデュースするなど、藩を治めながらとことんお茶回りを極めてる!プロデュースした中でも、酒井抱一が絵を描き、原羊遊斎が漆を担当した漆器は本当に美しかったな…。

才能と行動力、影響力の強さ一番が一番感動で、どんなお人柄でどんなお考えで、どんな人生だったのか?と、人間としての不眛公に興味が尽きません。