晶の日記

見た展覧会や手芸など。時々民藝。

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見て、服を選んで買うことを考える。

渋谷のアップリンクにて

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見てきました。

昨年、たまたま読んだファストファッションの本に衝撃を受けて

ぜひ見たいと思っていたので、ようやくです。

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自分が受けたショックが想像以上に大きかったので、

ブログにするまで時間がかかりました。

 

unitedpeople.jp

 

映画では時に残酷で目を覆いたくなるようなシーンが出てきますが、

これも現実、そして私たちの消費スタイルによってこのような現実が

実際に引き起こされているという意味で、二重にも、何重にも

大きいショックを受けました。

 

2013年にバングラディッシュの縫製工場の入った8階建てのビルが倒壊し、

多くの犠牲者を生んでしまった事故が起こってしまいましたし、

カンボジアでも最低賃金の引き上げを要求した労働者たちが命を失ったり、

ひどい暴行を受けるという、残酷な現実もありました。

政府や工場管理者もひどい待遇をしていますが、彼らも、低コスト短納期で

ものを作って納めなければ、仕事を与えない、よその工場やよその国へ

仕事を振るからという、追い詰められた現実があります。

 

映画の中でもありましたが、仕事が必要な人から利益を奪ってしまい、

一部の人の利益のためにたくさんの犠牲になる人がいます。

そうなってしまうシステムで洋服がつくられて、世界で売られています。

 

過酷な労働環境は工場内だけではなく、綿花を育てる農場での農薬による

健康被害や経済的な困窮を招いている仕組みや、

皮革工場から出る汚染水による皮膚病や障害などの健康被害など、

深刻な問題は他にもたくさんあります。

華やかなファッションを生産する裏側で。

 

ファストファッションの台頭により、今までシーズン毎に展示会を行い、

商品を供給してきたサイクルから、毎週新商品が店頭に出るという

短期間のサイクルに移り変わってきました。

そのため、消費者も安くて目新しい商品を次々に買い求め、

安価であるが故、飽きれば処分し、次の服を買うというように

どんどん消費を繰り返し、着ない服を増やしていきます。

 

処分された服は埋め立て処理されることになった場合は自然に還ることはできず、

有害物質を発生させることもあり、

また、別の国へリサイクル品として寄付されることもありますが、

受け入れた国では寄付された服が多すぎて自国の縫製業や縫製技術が

衰退するという現実もあるとのことです。

私は個人的に、その国の人たちが好ましい服を自分たちで作って着る機会を

他国の消費スタイルによって奪われることは大変悲しいことだと思い、

このことにもショックを受けました。

 

先進国でファストファッションを次々に買って、着ては処分する、

または整理がつかず溜め込んでしまう人たちにも、心を満たすことのできない

なにかさみしいものを感じてしまいます。

そういう意味では、この仕組みから、多くの利益を上げて得をしている人もいる

一方で、大きく損失、損害、心身の痛みなどを負っている人がいることも現実であり、

仕組みとして限界を迎えているように感じます。

 

バングラディッシュの女性労働者の方が、

「私たちの血で洋服ができています。

でも、血で作られた服を誰にも着て欲しくはないんです。」

といったことを、涙ながらに語ってくれていました。

 

消費が選べる自分は、血で作られた服を買ったり身につけることは避けたいですし、

それと同じくらい、血で服を作るような労働をする人がいて欲しくないです。

ファッション界の抱えているこの問題は大きいものですが、

自分の消費スタイルを変えていくことはすぐにでも取り掛かれるし、

そこから変えていけるようになるという思考で行動できるようにすることが

自分がすぐにできることかと思いましたし、ちゃんと考えようと思いました。

 

遠くの違う環境にいても、自分と同じように家族や大切な人がいて、

元気に安心して、毎日を幸せに暮らすことが、人として、誰もが尊重されている。

そういうことが当たり前であって欲しいです。

 

私もアパレル業界でずっと働いてきましたが(今はちょっと離れてますが)、

洋服は何人もの人がかかわって1着の形にすることができます。

そして、縫製などの技術もすぐにできるようになるのではなくて、

何年も経験を積んで良いものが作れるようになっていくので、

使い捨ての労働ではなくて、お互いに協力していいものを作り続けられるような

関係を結んでいくこともとても大切なことと思います。

映画では海外工場の話がメインでしたが、国内でも高齢化や研修生の受け入れなど

労働環境が厳しい面も多くあることと思いますし、

なんだかこう。。。利益独占ではなくて、みんなで豊かさを分かち合えるような、

その豊かさも金銭面だけではなくて技術の共有やものづくりの感性や達成感の共有

など、幅広く豊かであって欲しいと思いました。

洋服ってそういう楽しく幸せな部分も持ち合わせているものだと思うので。

 

この問題については考え続けたいと思います。

 

 

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

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