晶の日記

見た展覧会や手芸など。時々民藝。

芹沢銈介さんの世界を国立近代美術館工芸館で

安田靫彦展の後、出光美術館へ行きたい気持ち満々でしたが、

月曜日なので出光は休館。

でも何か見たいというところにうってつけの展覧会が!

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ということで、

工芸館の「芹沢銈介のいろは 金子量重コレクション」を見てきました。

 

若いころ、芹沢銈介さんが好きすぎて、四国の山の上にある美術館に行ったら

残念ながら休館でしたが館の方が哀れに思ったのかカレンダーを売ってくれて

駅まで送って下さいました。

青春18きっぷで旅行中に思い立って登呂遺跡にある芹沢銈介美術館へ寄り、

バスの都合でさっと見てとんぼ返りしたことも。

もとはといえば、大原美術館の工芸館があまりに素敵でそこからの民藝ファン、

そして20代後半での美術館ボランティアで自分の好みが培われたと思います。

今日も展示にすごくワクワクして見てきました。

 

芹沢銈介といえば、文字を装飾化して絵のように描いた作品が多くあります。

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着物の柄もよく見ると文字

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こちらは、大皿の焼き物に描きたい模様の案!

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書もあり。

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こんな書と絵が一緒の色紙も。

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光原社のマッチ箱の絵。

「わたしは染工として、染めるものならなんでもやる。

マッチ箱だって、蔵書票だって、わたしには本をつくるのとおなじです。

おなじ打ちこみ方をしてしまうのです。」

さすがです!!

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うちわも。

民藝館とかで夏に貸してくれるのは、この芹沢銈介デザインだった気が。

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カレンダー

今も富山県八尾町の桂樹舎さんにて製作されているそうです。

図案がおもしろくて、かわいくて、いろんなデザインがあります。

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「暮らしの美」を啓発する民藝運動の機関誌として出版された

『工藝』

表紙は芹沢銈介の図案、他には棟方志功のもあり、

柳宗悦をはじめ、河井寛次郎、富本憲吉、浜田庄司等が執筆したそうです。

専用の入れる箱(蓋付き!)もあるのですね。。。

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工芸館の2階には、黒田辰秋さんの椅子もありました。

京都の喫茶店進々堂にも大きいテーブルがあります。

なんとなく似た雰囲気です。

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こちらの国立近代美術館工芸館は、金沢へ移転することが決まっています。

キャプションのデザインや字体がちょっと古めかしい感じだったので、

新しい土地で洗練された展示になることを願っています!

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「芹沢慶介のいろは 金子量重コレクション」

国立近代美術館工芸館にて 5月8日(日)まで

 

www.momat.go.jp

GWは竹橋へ 安田靫彦展を見てきました。

好きな画家を上げてくださいと言われたら、

私は迷わず「小倉遊亀さん」と答えます。

小倉遊亀さんの日常を描きながら、常に絵は明るくチャレンジしている空気が

とっても好きです。

生き生きした絵、綺麗な色、年々豊かに広がる表現も。。。

実際には今のように女性が仕事をしていない時代に自分を表現する絵を描くお仕事を

されることは大変だったことと思うのですが。

 

安田靫彦さんは小倉遊亀さんの師匠です。

それなので、私も今日は竹橋にある東京国立近代美術館の展覧会へ行ってきました。

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安田さんの透けるような綺麗な色や余白の美しさ、上品な絵はとても魅力的でした。

 

歴史の場面を描かれたものが多いのですが、古典を紐とき、ご自身の想像の中で

イメージを作られて表現されていらっしゃるようでした。

歴史もとても勉強されたでしょうし、腕や首などの身体に身につける装飾品や、

手に持つ道具類なども丁寧に描かれていて、確かに博物館や正倉院展で見る道具や

装飾品なのですが、このように使われていた様子を表現し、仕事がとても丁寧だと

思いました。キャプションに製作年と並んで年齢も書いてありましたが、

若いときから惜しみなく才能を発揮されていたのは、この真面目な姿勢があって

のことかと思いました。

 

私が特に感動したのは「夢殿」。28歳の時の作品です。

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※画像は滋賀県立近代美術館のホームページよりお借りしました。

 作品は東京国立博物館

 

着物の色と柄がとにかく美しくて、見とれました。

淡いピンクとベージュのような色で、繊細な線で描かれています。

中央にいるのは聖徳太子です。

聖徳太子を描いた作品は他にも複数ありました。

 

それと、私は若いときに美術館のボランティアでお世話になっていたのですが、

そちらの収蔵品の中に安田靫彦さんの作品があったので、

今日は懐かしく見入りました。別の美術館でまた再会できるとうれしいものですね。

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「飛鳥の春の額田王滋賀県立近代美術館のホームページより

 

20代の時にはどれが誰の作品かとか、正直よく理解できていませんでしたが、

いつも見ているとそれは自分の中に蓄積されていて、

年月がたってから引き出されたり、結びついたりするものだなぁと感じています。

だからやっぱりいいなと思ったものはとりあえず見る、感じる、という

スタンスでこれからもいろいろな作品と出会っていきたいと思います。

 

見に来ている方々もシニア層が多かったのですが、皆さん絵の前で譲り合って、

ショーケースの絵巻などは並んで、ゆったり落ち着いて鑑賞されていました。

結構混んでいましたが、私語もほとんど聞こえてこなくて、静かに見ました。

(先日の若冲展がウソみたいに!)

 

おばあさまたちの会話が聞こえてきたのですが、

頼朝(右)を堂々と華やかに見せ、義経(左)を地味にさみしく見せるため、

頼朝の背景のみに金粉をまいているそうです。

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確かに控えめながらきらきらしていました。

 

後で見た常設で小倉遊亀さんの絵を見ることができました。うれしい!

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※常設展は禁止マークのない作品は撮影可能とのことです。

 

東京国立近代美術館にて5月15日(日)までです。

www.momat.go.jp

生誕300年記念・若冲展に乗り込んで。

覚悟を決めて、若冲展に行ってきました。

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4月22日(金)から1か月間の短い期間なので、WEBでチケット買って、

4月26日(火)に。平日だったら大丈夫かなと思ったので。

 

私が初めて若冲を見たのは、名古屋でやっていたプライスコレクションです。

名古屋に連れて行ってもらったはいいけれど、数時間は一人で時間を潰さなきゃ

ならず、ちょうど栄にいたので美術館に行きました。

その前後に赤瀬川源平さんと山下裕二先生のこちらの本を読んだので、

若冲の存在だけは知っていました。

 

日本美術応援団 (ちくま文庫)

日本美術応援団 (ちくま文庫)

 

 

混んでいるとは思いましたが、9時15分頃東京都美術館に着いたら長蛇の列。

開館直後はやばいかもねと東照宮を散歩したり、国立博物館の常設展を見たりして

時間を潰して。。。

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国立博物館では、ちょうど「平成28年 新指定国宝・重要文化財」の展示があって、

国宝になった 岩佐又兵衛『紙本金地着色洛中洛外図(舟木本)』を見ることが

できました。

先日、日本美術全集の刊行記念のトークイベントで、国宝になったことを

辻先生と山下先生がお話されていました。

年初に「奇想の図譜」と間違えて「奇想の発見」という辻惟雄先生の自伝を

読んだのですが、それがすごく役立っているというか、最近の興味が辻先生に

行き着くので、本当によかったです。お人柄も素敵なので。

 

そんなで若冲展に戻っても、まだ行列。ランチしてお茶して戻ってもまだ行列で、

14時頃から70分並びました。暑い日だったので、美術館の入り口には給水所も!

 

館内で並んでいる途中に、「鳥獣花木図屏風」(白い象や鳥などのモザイク絵)の

チームラボの映像をやっていて、そちら側だったのでずっと見ていました。

館内で実物を見て、たくさんの動物や鳥が発見できて2度おいしかったです。

 

今回の目玉は宮内庁の「釈迦三尊像」と「動植綵絵」の全30幅が一度に公開

されるということで、そちらはやはり大混雑。

鑑賞者の流れができておらず、動きのない中、みんな必死に目的の絵を見ていました。

若冲の絵が細かいところまで丁寧にびっくりするくらい描きこんでいるので

長いことみていても飽きることはなく、どんどんいろんなことが発見できます。

みんな時間が足りないと思っていたことと思います。。。

 

私は動植綵絵のバラと小鳥の絵に今回一番魅了されました。

動植綵絵・薔薇小禽図」(写真は図録より)

 

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すごく美しい!華やかで綺麗で、素晴らしいです。。。感動でした。

 

若冲は京都の錦小路にある八百屋さんの長男として生まれましたが、

商売に興味がなく、賭け事や女性にも興味がなく、仏教を信じて

頭を丸め、菜食で、生涯独身を貫くような人だったようです。

狩野派に弟子入りしましたが、その後自分で写実を追求するようになり、

庭に何羽も鶏を飼って観察し、自らの絵を極めていったようです。

40歳頃お店を弟さんに任せて隠居して絵を本格的に描き始め、

10年ほどかかって「釈迦三尊像」と「動植綵絵」を完成させて

相国寺におさめたそうです。

その後、廃仏毀釈により相国寺がダメージを受けた際に、これらの絵を

宮内庁が買い上げて、そのおかげでお寺が救われたとか。

 

若冲はこの動植綵絵などを描きながら、水墨画も合間にたくさん描いて

いたそうです。水墨画はまた、省略された線とユーモアのある表現で

別の若冲らしさが表れています。

見ていて微笑んでしまうような絵もたくさんありました。

 

他にも、「鳥獣花木図屏風」のモザイク的な構成などの新しい表現、

新しい色や技術を取り入れたり、同じ絵を描くときは1回目より

進歩させるというか、新しいことを取り入れるなど、常に好奇心と

探究することを忘れなかったようです。

 

自分の好きなこととはいえ、絵の世界を探求し、新しいことを常に試み、

様々な表現を用いて自分の世界を描いていく。

朝から夕方までの日が差す時間だけしか明るくないでしょうし、

その時間だけ集中して描いていたのかもしれないし、

今より情報が少ない中で新しい画材を手に入れたり、新しいことを知ったり

していたと思うと本当にすごいと思います。

省みて、情報や物流が発達し、夜でも電気が使える現在ですが、

若冲若冲の生きた時代は想像力が今よりもっと発達していたのかもしれません。

 

アメリカにいらっしゃるプライスご夫婦が若冲を発見してくれて、

そして若冲の素晴らしさを日本人の私たちと共有してくれて

よかったなぁと思いました。

 

たくさん待ったりとか、混んでてなかなか見られないとか

イラッとすることもたくさんありましたが、

結局楽しく見ることができて感動できたので、若冲展行ってよかったです。

 

MIYAKE ISSEY展 三宅一生さんの仕事を見に。

書こうと思いながら1ヶ月以上もたってしまい、私も1つ歳をとりました。。。

4月22日生まれなのですが、誕生日占いで「同じ日に生まれた有名人」として

三宅一生さんのお名前が挙がっているので、22日は展覧会へ行ってきました。

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www.fashion-press.net

 

展覧会HP(音が出ます。)

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

 

1970年に事務所を立ち上げられてからの作品の陳列から始まり現在に至るまでの

多くのデザインの服が展示されていました。

詳しく存じ上げていなくて、「プリーツ」のイメージが大きかったのですが、

プリーツだけでも多くの作品があり、展示もロープをひっぱってプリーツを

揺らしてみたり、プリーツを折る機械を実演していたり、

(作業しているスタッフの方もプリーツのかっこいいユニフォームでした。)

仮想で各国のオリンピックユニフォームを作ってみたりと、

デザインを発想し、現実化、それを楽しむところまで見せてくれていました。

 

他にも折りたたんで平面になるけど、着ると立体の素敵なドレスや

1枚の布を型抜きして纏う服、作品を使った映像など、多くのアイディアと

おもしろいもので溢れた展覧会でした。

 

三宅一生さんのつくる服は平面においてもデザインがかっこいいですが、

着るとまたかっこよく、レディースは女性らしさもあったりします。

すごく考えられていると思うし、多くの方々の知恵やセンスや、

新しい技術、世界中のいろいろ。。。あらゆるものを集結して作っていると思います。

 

今はあるかわかりませんが、10年以上前に、代々木上原らへんに

三宅一生さんのギャラリーがあって、そこで初めてハッリ・コスキネンの

透明なブロックに電球が入っているデザインを見てびっくりしました。

アーヴィング・ペン、田中一光さんとのかっこいいポスターなど、

洋服以外にも多くのセンス溢れるデザインを世に送り出していらっしゃる

三宅一生さんの才能を同世代で触れられることをうれしく思います。

21_21 DESIGN SIGHT - 企画展 「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展 - 開催概要

 

といっても、ISSEY MIYAKEの洋服を着ているわけでもなく、

三宅一生さんがディレクターを務めていらっしゃる21_21DESIGN SIGHTの企画展に

時々足を運び、ショップでお洋服やバッグをを眺めるくらいのファンですが、

これからもご活躍を楽しみにしています。

www.2121designsight.jp

 

先日、三宅一生さんの全仕事をまとめた本が刊行されました。

過去から最新のプロジェクトまでを見直し、年代順に紹介された

今までの仕事の集大成という大作で、世界1,000部限定とか!

Issey Miyake

Issey Miyake

 

 

この前、自分がどんな50歳を迎えるか考えているときに眺めていたこちらの本。

 

ずっと美しい人のマイ・スタイル (集英社ムック)

ずっと美しい人のマイ・スタイル (集英社ムック)

 

 こちらに、上記の三宅一生さんの本を3年以上かけて構想し、作り上げられた

北村みどりさんが載っていました。

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カッコイイです!

もともとお美しいと思いますが、常にセンスを磨き、表現される努力あっての

素敵さですね。

憧れます。

 

MIYAKE ISSEY展・三宅一生の仕事

国立新美術館にて 6月13日(月)まで

 

 

 

三菱一号美術館『PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服』 展覧会を見る楽しみ

今日は目黒区美術館のデザインキャンプでハーマンミラーストアへ。

この件はまたよく咀嚼してから書きたいです。

 

お昼過ぎに終わって、いいお天気だったし、せっかく丸の内にいたので、

三菱一号美術館でオートクチュールの展覧会を見てきました。

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PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服 |三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

19世紀後半から現代まで、歴史を追って展示されていました。

オートクチュールだけあって、ものすごく繊細な刺繍やビーズ、レースなどで

美しく彩られたドレス、シルエットの美しいドレス。。。

綺麗なものって見ているだけで幸せな気持ちになれると改めて思いました。

 

一部屋のみ、撮影可能な部屋がありました。(フラッシュ禁止)

バイアスカットで有名なマドレーヌ・ヴィオレのドレス。

シルエットも流れるように美しかったです。

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ランバンの上品でエレガントなドレス。

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個人的には、こういう綺麗で上品で

身体のラインに沿ったシルエットのものが好きです。

 

今回の展覧会を通してみて、エルザ・スキャパレリがとても気になりました。

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何点か展示作品を見て、また会場内で閲覧可能となっていた

書棚にあった図録や写真集などの書籍にもたくさん掲載されていました。

「ショッキング・ピンクの生みの親」と呼ばれていたそうですが、

色や形も大胆で奇抜、既成概念にとらわれない表現をファッションに取り入れて

いました。シュールレアリスムの画家のダリとも親交があったとか。

ココ・シャネルと同時代を生きた女性でしたが、

シャネルの装飾を取り払い機能的でシンプルなメンズライクな服とは対照的で、

独創的でアバンギャルドな表現でアート作品のような服を作っていたようです。

 

ポスターやチケットになっている黒とゴールドのドレスもスキャパレリです。

いろいろ作品を本やネットで見てみましたが、個性的ですが、女性的でもあって、

主張ある美しさがカッコイイなと思いました。

見ていて楽しい気持ちになるし、着てみたくなります。

 

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こちらの展覧会は、世田谷美術館で開催中の『ファッション史の愉しみ』の

半券を持っていくと100円割引になります。

最近、相互割引サービスが流行っているのか、

村上隆さんの五百羅漢図展とスーパーフラット展もそうでした。

 

余談となりますが。。。

今回の展覧会を見ている途中に、デザインキャンプでご一緒した女性と

会場内でばったりお会いして、途中から一緒に展示を見ました。

年代を見て、この時は戦争が終わってのびのびとした時代だったのかしら?とか、

ドレスにこの素材をつかっているのにはびっくりね!とか、

ビーズやパーツの細部も丁寧に見ていたり、書籍を眺めていても写真のシーンや

女優さんをよくご存じだったり、デザイナーの特徴や関係も把握してらして、

びっくりしました。そして、見ながらご自身の知識に新しい知識や情報を紐つけて

いかれるようにどんどん吸収されていたので、本当、すごい!と尊敬でした。

こういうことが「教養」なんだなと思い、ものの見方の勉強になりました。

ファッションやアート関係のお仕事ではないとのことで、

見方や考え方が確立されていると、分野は関係なく、自分の目で見て考え、

身につけることができるのだなあと思いました。

誰かと一緒に展覧会を見ることは、新しい発見が多いですね。

 

今春はファッションの展覧会がいっぱい。

次はイッセイミヤケに行きたいです。

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

(音が出ます。)

 

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あたたかい陽気の中、良い刺激のあるいい一日でした。

もう春になったし、いろいろ動いていきたいな。

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見て、服を選んで買うことを考える。

渋谷のアップリンクにて

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見てきました。

昨年、たまたま読んだファストファッションの本に衝撃を受けて

ぜひ見たいと思っていたので、ようやくです。

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自分が受けたショックが想像以上に大きかったので、

ブログにするまで時間がかかりました。

 

unitedpeople.jp

 

映画では時に残酷で目を覆いたくなるようなシーンが出てきますが、

これも現実、そして私たちの消費スタイルによってこのような現実が

実際に引き起こされているという意味で、二重にも、何重にも

大きいショックを受けました。

 

2013年にバングラディッシュの縫製工場の入った8階建てのビルが倒壊し、

多くの犠牲者を生んでしまった事故が起こってしまいましたし、

カンボジアでも最低賃金の引き上げを要求した労働者たちが命を失ったり、

ひどい暴行を受けるという、残酷な現実もありました。

政府や工場管理者もひどい待遇をしていますが、彼らも、低コスト短納期で

ものを作って納めなければ、仕事を与えない、よその工場やよその国へ

仕事を振るからという、追い詰められた現実があります。

 

映画の中でもありましたが、仕事が必要な人から利益を奪ってしまい、

一部の人の利益のためにたくさんの犠牲になる人がいます。

そうなってしまうシステムで洋服がつくられて、世界で売られています。

 

過酷な労働環境は工場内だけではなく、綿花を育てる農場での農薬による

健康被害や経済的な困窮を招いている仕組みや、

皮革工場から出る汚染水による皮膚病や障害などの健康被害など、

深刻な問題は他にもたくさんあります。

華やかなファッションを生産する裏側で。

 

ファストファッションの台頭により、今までシーズン毎に展示会を行い、

商品を供給してきたサイクルから、毎週新商品が店頭に出るという

短期間のサイクルに移り変わってきました。

そのため、消費者も安くて目新しい商品を次々に買い求め、

安価であるが故、飽きれば処分し、次の服を買うというように

どんどん消費を繰り返し、着ない服を増やしていきます。

 

処分された服は埋め立て処理されることになった場合は自然に還ることはできず、

有害物質を発生させることもあり、

また、別の国へリサイクル品として寄付されることもありますが、

受け入れた国では寄付された服が多すぎて自国の縫製業や縫製技術が

衰退するという現実もあるとのことです。

私は個人的に、その国の人たちが好ましい服を自分たちで作って着る機会を

他国の消費スタイルによって奪われることは大変悲しいことだと思い、

このことにもショックを受けました。

 

先進国でファストファッションを次々に買って、着ては処分する、

または整理がつかず溜め込んでしまう人たちにも、心を満たすことのできない

なにかさみしいものを感じてしまいます。

そういう意味では、この仕組みから、多くの利益を上げて得をしている人もいる

一方で、大きく損失、損害、心身の痛みなどを負っている人がいることも現実であり、

仕組みとして限界を迎えているように感じます。

 

バングラディッシュの女性労働者の方が、

「私たちの血で洋服ができています。

でも、血で作られた服を誰にも着て欲しくはないんです。」

といったことを、涙ながらに語ってくれていました。

 

消費が選べる自分は、血で作られた服を買ったり身につけることは避けたいですし、

それと同じくらい、血で服を作るような労働をする人がいて欲しくないです。

ファッション界の抱えているこの問題は大きいものですが、

自分の消費スタイルを変えていくことはすぐにでも取り掛かれるし、

そこから変えていけるようになるという思考で行動できるようにすることが

自分がすぐにできることかと思いましたし、ちゃんと考えようと思いました。

 

遠くの違う環境にいても、自分と同じように家族や大切な人がいて、

元気に安心して、毎日を幸せに暮らすことが、人として、誰もが尊重されている。

そういうことが当たり前であって欲しいです。

 

私もアパレル業界でずっと働いてきましたが(今はちょっと離れてますが)、

洋服は何人もの人がかかわって1着の形にすることができます。

そして、縫製などの技術もすぐにできるようになるのではなくて、

何年も経験を積んで良いものが作れるようになっていくので、

使い捨ての労働ではなくて、お互いに協力していいものを作り続けられるような

関係を結んでいくこともとても大切なことと思います。

映画では海外工場の話がメインでしたが、国内でも高齢化や研修生の受け入れなど

労働環境が厳しい面も多くあることと思いますし、

なんだかこう。。。利益独占ではなくて、みんなで豊かさを分かち合えるような、

その豊かさも金銭面だけではなくて技術の共有やものづくりの感性や達成感の共有

など、幅広く豊かであって欲しいと思いました。

洋服ってそういう楽しく幸せな部分も持ち合わせているものだと思うので。

 

この問題については考え続けたいと思います。

 

 

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

 

 

印象派の女性画家「メアリー・カサット」の魅力の詰まった、江國香織さんのトークイベント

横浜美術館で6月25日から、「メアリー・カサット展」が始まります。

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メアリー・カサット展 / 2016年6月25日(土)~9月11日(日) / 横浜美術館

 

カサットは印象派として活動された女性画家。

アメリカに生まれ、21歳でパリへ渡って絵を学び、生涯パリで生きました。

女性の画家がまだあまりいない時代に、印象派という革新的なグループで

表現を模索しながら、新しい技法も積極的に取り入れ、精力的に活動されました。

女性や子供のいる日常を油彩やデッサン、版画などで描いた作品は

あたたかさ、やさしさが感じられ、海外では人気があるようです。

今回の横浜美術館での展覧会は日本では35年ぶりとのこと。

 

開催記念イベントとして、江國香織さんのトークショーが9日にありました。

記者の方々への発表を兼ねているため、一般枠で応募して当選できました。

うれしい!

 

私は江國香織さんの書くものが好きです。

30歳の誕生日にエッセイをプレゼントしてもらって初めて読みましたが、

江國さんの感性や言葉のつかい方、描く描写がとても好きです。

先日ブログに書いた江國さんのご著書「日の当たる白い壁」には、

カサットの絵も紹介されていました。

大原美術館の2つの絵―江國香織さん『日のあたる白い壁』 - 本と共に暮らす晶の日々

 

私はそちらでカサットを知ったのですが、学芸員の沼田さんが

今回江國さんにお願いしたのは、こちらの本に取り上げられていたからですと

おっしゃられていたので、それもとてもうれしかったです。

 

江國さんは本からのイメージ通りでした。

私が思っていたよりもすごくかわいらしい方でした。

飾らない感じで、まっすぐにものを見て捉え、自分の表現で話し、

言葉や語彙が豊富で、豊かな感性がすごく伝わってくる方でした。

さすが、小説家!と思ってしまう自分の語彙の貧困さにあきれます。。。

 

イベントでは沼田さんが展覧会の作品や見どころをご紹介してくださった後、

お二方の対談でした。

美術館について、先述の「日の当たる白い壁」について、カサットの作品や

人間性についてなど。。。楽しいお話がたくさんでした。

 

カサットは油彩以外にも、銅版画や鉛筆画などの作品も残していて

絵に対してたくさんチャレンジもして、積極的でした。

女性が絵を描くということでお父さんにも激しく反対された時代の中で、

単身パリで好きな絵を描き続け、イタリアやスペインで巨匠たちの絵を模写したりと

努力を積み重ね、サロン出品を目指しました。

その後、当時前衛的で革新的な印象派に所属し、作品を発表したり、銅版画に熱中、

また、パリで見た浮世絵版画展で感銘を受け、作品に積極的に取り入れ、

ジャポニズムの画家としても名前があがる存在とのことです。

 

そんなカサットは新しい時代を切り開いたエネルギッシュな女性、

自立していて、バイタリティがすごくある女性だったようです。

江國さんはその他にも不穏なところを感じると言っていましたが。

 

カサットはパリに来て画家のドガと親交があり、ドガから教えを受けたり、

印象派に誘われて一緒に活動をしたり、銅版画を共に研究したり、

また、ドガの最後はカサットが看取ったとのことでした。

ドガとの関係は?恋愛関係だったのでは?

カサットは晩年ドガの手紙を全部焼いてしまったらしいです。

それは。。。隠ぺい工作では?やっぱりあやしい!(笑)

など、女子トークのような内容もあったりして、カサットに親しみを感じました。

 

皮肉屋で攻撃的なドガとどうして付き合っているの?と聞かれたカサットは

「それは私が自立しているからよ」と答えたそうです。

結婚に頼ることなく自分の意志で自立した生き方を貫いたカサットだったようです。

 

江國さんは「日の当たる白い壁」の中で23人の画家を紹介し、

その中に女性は、カサット、オキーフ小倉遊亀の3人でした。

意識していなかったそうですが、3人とも女性の日常を題材にしても

甘くなりすぎず、叙情に流されず、明晰な視線が感じられる。

女おんなしてなくて、知的であり、しっかり自分を主張できるけど、

とても女性らしく、女性を謳歌した人たちでもあったという点が共通している。

と振り返って述べられていました。

 

他にもいろんな貴重なお話を聴かせていただきましたが、

カサットのような女性であることを謳歌しながら、自立している女性というのは

今からの時代に合っているように感じます。きっと共感できる女性も多いと思います。

このタイミングでカサットの作品が見られることは幸せです。

 

本物の絵は印刷物とはまた違う魅力があるとのことなので、肉眼で見ることが

楽しみです。展覧会でカサットを感じてこようと思います。

 

展覧会の準備に4年もかかるとは知りませんでした。

学芸員の沼田さんの熱意のこもった展覧会が、今からとっても待ち遠しいです。

落ち着いて上品にお話される沼田さんの中に、熱い想いがこもっていたので

とても素敵だなと思いました。良い作品を日本に呼んでいただけてうれしいです。

 

6月25日(土)~9月11日(日)横浜美術館にて。

※4月4日までは先行ペア券2400円が販売されていて、1人400円もお得です!

 

京都展は京都国立近代美術館にて。

9月27日(火)~12月4日(日)