晶の日記

見た展覧会や手芸など。時々民藝。

生誕300年記念・若冲展に乗り込んで。

覚悟を決めて、若冲展に行ってきました。

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4月22日(金)から1か月間の短い期間なので、WEBでチケット買って、

4月26日(火)に。平日だったら大丈夫かなと思ったので。

 

私が初めて若冲を見たのは、名古屋でやっていたプライスコレクションです。

名古屋に連れて行ってもらったはいいけれど、数時間は一人で時間を潰さなきゃ

ならず、ちょうど栄にいたので美術館に行きました。

その前後に赤瀬川源平さんと山下裕二先生のこちらの本を読んだので、

若冲の存在だけは知っていました。

 

日本美術応援団 (ちくま文庫)

日本美術応援団 (ちくま文庫)

 

 

混んでいるとは思いましたが、9時15分頃東京都美術館に着いたら長蛇の列。

開館直後はやばいかもねと東照宮を散歩したり、国立博物館の常設展を見たりして

時間を潰して。。。

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国立博物館では、ちょうど「平成28年 新指定国宝・重要文化財」の展示があって、

国宝になった 岩佐又兵衛『紙本金地着色洛中洛外図(舟木本)』を見ることが

できました。

先日、日本美術全集の刊行記念のトークイベントで、国宝になったことを

辻先生と山下先生がお話されていました。

年初に「奇想の図譜」と間違えて「奇想の発見」という辻惟雄先生の自伝を

読んだのですが、それがすごく役立っているというか、最近の興味が辻先生に

行き着くので、本当によかったです。お人柄も素敵なので。

 

そんなで若冲展に戻っても、まだ行列。ランチしてお茶して戻ってもまだ行列で、

14時頃から70分並びました。暑い日だったので、美術館の入り口には給水所も!

 

館内で並んでいる途中に、「鳥獣花木図屏風」(白い象や鳥などのモザイク絵)の

チームラボの映像をやっていて、そちら側だったのでずっと見ていました。

館内で実物を見て、たくさんの動物や鳥が発見できて2度おいしかったです。

 

今回の目玉は宮内庁の「釈迦三尊像」と「動植綵絵」の全30幅が一度に公開

されるということで、そちらはやはり大混雑。

鑑賞者の流れができておらず、動きのない中、みんな必死に目的の絵を見ていました。

若冲の絵が細かいところまで丁寧にびっくりするくらい描きこんでいるので

長いことみていても飽きることはなく、どんどんいろんなことが発見できます。

みんな時間が足りないと思っていたことと思います。。。

 

私は動植綵絵のバラと小鳥の絵に今回一番魅了されました。

動植綵絵・薔薇小禽図」(写真は図録より)

 

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すごく美しい!華やかで綺麗で、素晴らしいです。。。感動でした。

 

若冲は京都の錦小路にある八百屋さんの長男として生まれましたが、

商売に興味がなく、賭け事や女性にも興味がなく、仏教を信じて

頭を丸め、菜食で、生涯独身を貫くような人だったようです。

狩野派に弟子入りしましたが、その後自分で写実を追求するようになり、

庭に何羽も鶏を飼って観察し、自らの絵を極めていったようです。

40歳頃お店を弟さんに任せて隠居して絵を本格的に描き始め、

10年ほどかかって「釈迦三尊像」と「動植綵絵」を完成させて

相国寺におさめたそうです。

その後、廃仏毀釈により相国寺がダメージを受けた際に、これらの絵を

宮内庁が買い上げて、そのおかげでお寺が救われたとか。

 

若冲はこの動植綵絵などを描きながら、水墨画も合間にたくさん描いて

いたそうです。水墨画はまた、省略された線とユーモアのある表現で

別の若冲らしさが表れています。

見ていて微笑んでしまうような絵もたくさんありました。

 

他にも、「鳥獣花木図屏風」のモザイク的な構成などの新しい表現、

新しい色や技術を取り入れたり、同じ絵を描くときは1回目より

進歩させるというか、新しいことを取り入れるなど、常に好奇心と

探究することを忘れなかったようです。

 

自分の好きなこととはいえ、絵の世界を探求し、新しいことを常に試み、

様々な表現を用いて自分の世界を描いていく。

朝から夕方までの日が差す時間だけしか明るくないでしょうし、

その時間だけ集中して描いていたのかもしれないし、

今より情報が少ない中で新しい画材を手に入れたり、新しいことを知ったり

していたと思うと本当にすごいと思います。

省みて、情報や物流が発達し、夜でも電気が使える現在ですが、

若冲若冲の生きた時代は想像力が今よりもっと発達していたのかもしれません。

 

アメリカにいらっしゃるプライスご夫婦が若冲を発見してくれて、

そして若冲の素晴らしさを日本人の私たちと共有してくれて

よかったなぁと思いました。

 

たくさん待ったりとか、混んでてなかなか見られないとか

イラッとすることもたくさんありましたが、

結局楽しく見ることができて感動できたので、若冲展行ってよかったです。

 

MIYAKE ISSEY展 三宅一生さんの仕事を見に。

書こうと思いながら1ヶ月以上もたってしまい、私も1つ歳をとりました。。。

4月22日生まれなのですが、誕生日占いで「同じ日に生まれた有名人」として

三宅一生さんのお名前が挙がっているので、22日は展覧会へ行ってきました。

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www.fashion-press.net

 

展覧会HP(音が出ます。)

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

 

1970年に事務所を立ち上げられてからの作品の陳列から始まり現在に至るまでの

多くのデザインの服が展示されていました。

詳しく存じ上げていなくて、「プリーツ」のイメージが大きかったのですが、

プリーツだけでも多くの作品があり、展示もロープをひっぱってプリーツを

揺らしてみたり、プリーツを折る機械を実演していたり、

(作業しているスタッフの方もプリーツのかっこいいユニフォームでした。)

仮想で各国のオリンピックユニフォームを作ってみたりと、

デザインを発想し、現実化、それを楽しむところまで見せてくれていました。

 

他にも折りたたんで平面になるけど、着ると立体の素敵なドレスや

1枚の布を型抜きして纏う服、作品を使った映像など、多くのアイディアと

おもしろいもので溢れた展覧会でした。

 

三宅一生さんのつくる服は平面においてもデザインがかっこいいですが、

着るとまたかっこよく、レディースは女性らしさもあったりします。

すごく考えられていると思うし、多くの方々の知恵やセンスや、

新しい技術、世界中のいろいろ。。。あらゆるものを集結して作っていると思います。

 

今はあるかわかりませんが、10年以上前に、代々木上原らへんに

三宅一生さんのギャラリーがあって、そこで初めてハッリ・コスキネンの

透明なブロックに電球が入っているデザインを見てびっくりしました。

アーヴィング・ペン、田中一光さんとのかっこいいポスターなど、

洋服以外にも多くのセンス溢れるデザインを世に送り出していらっしゃる

三宅一生さんの才能を同世代で触れられることをうれしく思います。

21_21 DESIGN SIGHT - 企画展 「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展 - 開催概要

 

といっても、ISSEY MIYAKEの洋服を着ているわけでもなく、

三宅一生さんがディレクターを務めていらっしゃる21_21DESIGN SIGHTの企画展に

時々足を運び、ショップでお洋服やバッグをを眺めるくらいのファンですが、

これからもご活躍を楽しみにしています。

www.2121designsight.jp

 

先日、三宅一生さんの全仕事をまとめた本が刊行されました。

過去から最新のプロジェクトまでを見直し、年代順に紹介された

今までの仕事の集大成という大作で、世界1,000部限定とか!

Issey Miyake

Issey Miyake

 

 

この前、自分がどんな50歳を迎えるか考えているときに眺めていたこちらの本。

 

ずっと美しい人のマイ・スタイル (集英社ムック)

ずっと美しい人のマイ・スタイル (集英社ムック)

 

 こちらに、上記の三宅一生さんの本を3年以上かけて構想し、作り上げられた

北村みどりさんが載っていました。

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カッコイイです!

もともとお美しいと思いますが、常にセンスを磨き、表現される努力あっての

素敵さですね。

憧れます。

 

MIYAKE ISSEY展・三宅一生の仕事

国立新美術館にて 6月13日(月)まで

 

 

 

三菱一号美術館『PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服』 展覧会を見る楽しみ

今日は目黒区美術館のデザインキャンプでハーマンミラーストアへ。

この件はまたよく咀嚼してから書きたいです。

 

お昼過ぎに終わって、いいお天気だったし、せっかく丸の内にいたので、

三菱一号美術館でオートクチュールの展覧会を見てきました。

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PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服 |三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

19世紀後半から現代まで、歴史を追って展示されていました。

オートクチュールだけあって、ものすごく繊細な刺繍やビーズ、レースなどで

美しく彩られたドレス、シルエットの美しいドレス。。。

綺麗なものって見ているだけで幸せな気持ちになれると改めて思いました。

 

一部屋のみ、撮影可能な部屋がありました。(フラッシュ禁止)

バイアスカットで有名なマドレーヌ・ヴィオレのドレス。

シルエットも流れるように美しかったです。

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ランバンの上品でエレガントなドレス。

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個人的には、こういう綺麗で上品で

身体のラインに沿ったシルエットのものが好きです。

 

今回の展覧会を通してみて、エルザ・スキャパレリがとても気になりました。

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何点か展示作品を見て、また会場内で閲覧可能となっていた

書棚にあった図録や写真集などの書籍にもたくさん掲載されていました。

「ショッキング・ピンクの生みの親」と呼ばれていたそうですが、

色や形も大胆で奇抜、既成概念にとらわれない表現をファッションに取り入れて

いました。シュールレアリスムの画家のダリとも親交があったとか。

ココ・シャネルと同時代を生きた女性でしたが、

シャネルの装飾を取り払い機能的でシンプルなメンズライクな服とは対照的で、

独創的でアバンギャルドな表現でアート作品のような服を作っていたようです。

 

ポスターやチケットになっている黒とゴールドのドレスもスキャパレリです。

いろいろ作品を本やネットで見てみましたが、個性的ですが、女性的でもあって、

主張ある美しさがカッコイイなと思いました。

見ていて楽しい気持ちになるし、着てみたくなります。

 

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こちらの展覧会は、世田谷美術館で開催中の『ファッション史の愉しみ』の

半券を持っていくと100円割引になります。

最近、相互割引サービスが流行っているのか、

村上隆さんの五百羅漢図展とスーパーフラット展もそうでした。

 

余談となりますが。。。

今回の展覧会を見ている途中に、デザインキャンプでご一緒した女性と

会場内でばったりお会いして、途中から一緒に展示を見ました。

年代を見て、この時は戦争が終わってのびのびとした時代だったのかしら?とか、

ドレスにこの素材をつかっているのにはびっくりね!とか、

ビーズやパーツの細部も丁寧に見ていたり、書籍を眺めていても写真のシーンや

女優さんをよくご存じだったり、デザイナーの特徴や関係も把握してらして、

びっくりしました。そして、見ながらご自身の知識に新しい知識や情報を紐つけて

いかれるようにどんどん吸収されていたので、本当、すごい!と尊敬でした。

こういうことが「教養」なんだなと思い、ものの見方の勉強になりました。

ファッションやアート関係のお仕事ではないとのことで、

見方や考え方が確立されていると、分野は関係なく、自分の目で見て考え、

身につけることができるのだなあと思いました。

誰かと一緒に展覧会を見ることは、新しい発見が多いですね。

 

今春はファッションの展覧会がいっぱい。

次はイッセイミヤケに行きたいです。

MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

(音が出ます。)

 

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あたたかい陽気の中、良い刺激のあるいい一日でした。

もう春になったし、いろいろ動いていきたいな。

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見て、服を選んで買うことを考える。

渋谷のアップリンクにて

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見てきました。

昨年、たまたま読んだファストファッションの本に衝撃を受けて

ぜひ見たいと思っていたので、ようやくです。

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自分が受けたショックが想像以上に大きかったので、

ブログにするまで時間がかかりました。

 

unitedpeople.jp

 

映画では時に残酷で目を覆いたくなるようなシーンが出てきますが、

これも現実、そして私たちの消費スタイルによってこのような現実が

実際に引き起こされているという意味で、二重にも、何重にも

大きいショックを受けました。

 

2013年にバングラディッシュの縫製工場の入った8階建てのビルが倒壊し、

多くの犠牲者を生んでしまった事故が起こってしまいましたし、

カンボジアでも最低賃金の引き上げを要求した労働者たちが命を失ったり、

ひどい暴行を受けるという、残酷な現実もありました。

政府や工場管理者もひどい待遇をしていますが、彼らも、低コスト短納期で

ものを作って納めなければ、仕事を与えない、よその工場やよその国へ

仕事を振るからという、追い詰められた現実があります。

 

映画の中でもありましたが、仕事が必要な人から利益を奪ってしまい、

一部の人の利益のためにたくさんの犠牲になる人がいます。

そうなってしまうシステムで洋服がつくられて、世界で売られています。

 

過酷な労働環境は工場内だけではなく、綿花を育てる農場での農薬による

健康被害や経済的な困窮を招いている仕組みや、

皮革工場から出る汚染水による皮膚病や障害などの健康被害など、

深刻な問題は他にもたくさんあります。

華やかなファッションを生産する裏側で。

 

ファストファッションの台頭により、今までシーズン毎に展示会を行い、

商品を供給してきたサイクルから、毎週新商品が店頭に出るという

短期間のサイクルに移り変わってきました。

そのため、消費者も安くて目新しい商品を次々に買い求め、

安価であるが故、飽きれば処分し、次の服を買うというように

どんどん消費を繰り返し、着ない服を増やしていきます。

 

処分された服は埋め立て処理されることになった場合は自然に還ることはできず、

有害物質を発生させることもあり、

また、別の国へリサイクル品として寄付されることもありますが、

受け入れた国では寄付された服が多すぎて自国の縫製業や縫製技術が

衰退するという現実もあるとのことです。

私は個人的に、その国の人たちが好ましい服を自分たちで作って着る機会を

他国の消費スタイルによって奪われることは大変悲しいことだと思い、

このことにもショックを受けました。

 

先進国でファストファッションを次々に買って、着ては処分する、

または整理がつかず溜め込んでしまう人たちにも、心を満たすことのできない

なにかさみしいものを感じてしまいます。

そういう意味では、この仕組みから、多くの利益を上げて得をしている人もいる

一方で、大きく損失、損害、心身の痛みなどを負っている人がいることも現実であり、

仕組みとして限界を迎えているように感じます。

 

バングラディッシュの女性労働者の方が、

「私たちの血で洋服ができています。

でも、血で作られた服を誰にも着て欲しくはないんです。」

といったことを、涙ながらに語ってくれていました。

 

消費が選べる自分は、血で作られた服を買ったり身につけることは避けたいですし、

それと同じくらい、血で服を作るような労働をする人がいて欲しくないです。

ファッション界の抱えているこの問題は大きいものですが、

自分の消費スタイルを変えていくことはすぐにでも取り掛かれるし、

そこから変えていけるようになるという思考で行動できるようにすることが

自分がすぐにできることかと思いましたし、ちゃんと考えようと思いました。

 

遠くの違う環境にいても、自分と同じように家族や大切な人がいて、

元気に安心して、毎日を幸せに暮らすことが、人として、誰もが尊重されている。

そういうことが当たり前であって欲しいです。

 

私もアパレル業界でずっと働いてきましたが(今はちょっと離れてますが)、

洋服は何人もの人がかかわって1着の形にすることができます。

そして、縫製などの技術もすぐにできるようになるのではなくて、

何年も経験を積んで良いものが作れるようになっていくので、

使い捨ての労働ではなくて、お互いに協力していいものを作り続けられるような

関係を結んでいくこともとても大切なことと思います。

映画では海外工場の話がメインでしたが、国内でも高齢化や研修生の受け入れなど

労働環境が厳しい面も多くあることと思いますし、

なんだかこう。。。利益独占ではなくて、みんなで豊かさを分かち合えるような、

その豊かさも金銭面だけではなくて技術の共有やものづくりの感性や達成感の共有

など、幅広く豊かであって欲しいと思いました。

洋服ってそういう楽しく幸せな部分も持ち合わせているものだと思うので。

 

この問題については考え続けたいと思います。

 

 

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

 

 

印象派の女性画家「メアリー・カサット」の魅力の詰まった、江國香織さんのトークイベント

横浜美術館で6月25日から、「メアリー・カサット展」が始まります。

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メアリー・カサット展 / 2016年6月25日(土)~9月11日(日) / 横浜美術館

 

カサットは印象派として活動された女性画家。

アメリカに生まれ、21歳でパリへ渡って絵を学び、生涯パリで生きました。

女性の画家がまだあまりいない時代に、印象派という革新的なグループで

表現を模索しながら、新しい技法も積極的に取り入れ、精力的に活動されました。

女性や子供のいる日常を油彩やデッサン、版画などで描いた作品は

あたたかさ、やさしさが感じられ、海外では人気があるようです。

今回の横浜美術館での展覧会は日本では35年ぶりとのこと。

 

開催記念イベントとして、江國香織さんのトークショーが9日にありました。

記者の方々への発表を兼ねているため、一般枠で応募して当選できました。

うれしい!

 

私は江國香織さんの書くものが好きです。

30歳の誕生日にエッセイをプレゼントしてもらって初めて読みましたが、

江國さんの感性や言葉のつかい方、描く描写がとても好きです。

先日ブログに書いた江國さんのご著書「日の当たる白い壁」には、

カサットの絵も紹介されていました。

大原美術館の2つの絵―江國香織さん『日のあたる白い壁』 - 本と共に暮らす晶の日々

 

私はそちらでカサットを知ったのですが、学芸員の沼田さんが

今回江國さんにお願いしたのは、こちらの本に取り上げられていたからですと

おっしゃられていたので、それもとてもうれしかったです。

 

江國さんは本からのイメージ通りでした。

私が思っていたよりもすごくかわいらしい方でした。

飾らない感じで、まっすぐにものを見て捉え、自分の表現で話し、

言葉や語彙が豊富で、豊かな感性がすごく伝わってくる方でした。

さすが、小説家!と思ってしまう自分の語彙の貧困さにあきれます。。。

 

イベントでは沼田さんが展覧会の作品や見どころをご紹介してくださった後、

お二方の対談でした。

美術館について、先述の「日の当たる白い壁」について、カサットの作品や

人間性についてなど。。。楽しいお話がたくさんでした。

 

カサットは油彩以外にも、銅版画や鉛筆画などの作品も残していて

絵に対してたくさんチャレンジもして、積極的でした。

女性が絵を描くということでお父さんにも激しく反対された時代の中で、

単身パリで好きな絵を描き続け、イタリアやスペインで巨匠たちの絵を模写したりと

努力を積み重ね、サロン出品を目指しました。

その後、当時前衛的で革新的な印象派に所属し、作品を発表したり、銅版画に熱中、

また、パリで見た浮世絵版画展で感銘を受け、作品に積極的に取り入れ、

ジャポニズムの画家としても名前があがる存在とのことです。

 

そんなカサットは新しい時代を切り開いたエネルギッシュな女性、

自立していて、バイタリティがすごくある女性だったようです。

江國さんはその他にも不穏なところを感じると言っていましたが。

 

カサットはパリに来て画家のドガと親交があり、ドガから教えを受けたり、

印象派に誘われて一緒に活動をしたり、銅版画を共に研究したり、

また、ドガの最後はカサットが看取ったとのことでした。

ドガとの関係は?恋愛関係だったのでは?

カサットは晩年ドガの手紙を全部焼いてしまったらしいです。

それは。。。隠ぺい工作では?やっぱりあやしい!(笑)

など、女子トークのような内容もあったりして、カサットに親しみを感じました。

 

皮肉屋で攻撃的なドガとどうして付き合っているの?と聞かれたカサットは

「それは私が自立しているからよ」と答えたそうです。

結婚に頼ることなく自分の意志で自立した生き方を貫いたカサットだったようです。

 

江國さんは「日の当たる白い壁」の中で23人の画家を紹介し、

その中に女性は、カサット、オキーフ小倉遊亀の3人でした。

意識していなかったそうですが、3人とも女性の日常を題材にしても

甘くなりすぎず、叙情に流されず、明晰な視線が感じられる。

女おんなしてなくて、知的であり、しっかり自分を主張できるけど、

とても女性らしく、女性を謳歌した人たちでもあったという点が共通している。

と振り返って述べられていました。

 

他にもいろんな貴重なお話を聴かせていただきましたが、

カサットのような女性であることを謳歌しながら、自立している女性というのは

今からの時代に合っているように感じます。きっと共感できる女性も多いと思います。

このタイミングでカサットの作品が見られることは幸せです。

 

本物の絵は印刷物とはまた違う魅力があるとのことなので、肉眼で見ることが

楽しみです。展覧会でカサットを感じてこようと思います。

 

展覧会の準備に4年もかかるとは知りませんでした。

学芸員の沼田さんの熱意のこもった展覧会が、今からとっても待ち遠しいです。

落ち着いて上品にお話される沼田さんの中に、熱い想いがこもっていたので

とても素敵だなと思いました。良い作品を日本に呼んでいただけてうれしいです。

 

6月25日(土)~9月11日(日)横浜美術館にて。

※4月4日までは先行ペア券2400円が販売されていて、1人400円もお得です!

 

京都展は京都国立近代美術館にて。

9月27日(火)~12月4日(日)

『村上隆のスーパーフラット・コレクション』を見に、横浜美術館へ

2月は体調を崩したりして余裕がない毎日だったので、久しぶりに更新します。

 

1月に五百羅漢を見に行って村上隆さんの魅力に興味が出てきて

横浜美術館で開催中の展覧会を見に行ってきました。

 

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yokohama.art.museum

(メイキング映像が立ち上がるので、音が出ます。)

 

これ全部、村上さんのコレクションなんて!というくらい圧倒的な作品数です。

縄文時代の土器をはじめ、北大路魯山人の器や白隠禅師や曽我蕭白の絵などの

古い時代のものから、今現在ご活躍中のアーティストの作品まで、時代も国も

ジャンルも超えて、小さいものから大きいものまで、多種多様な作品が

村上さんに選ばれて所蔵され、この期間に横浜横浜美術館で公開されています。

 

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階段スペースやエントランスにも大きい作品がたくさんでした。

初めて行ったので、常設なのか企画展なのかよく分からずに

見ていました。。。

メイキング映像を見て、あの大きいのもコレクションだったの!?と

ビックリ。

 

奈良美智さんもいっぱい。

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また、大きいヌードモデルの人形(?)のモデルの周りにイーゼルが並び、

絵を描くスペースとなっており、用意された画材で自由に描くことで

展覧会に参加することもでき、そこからまた新しい作品が日々生まれる

ようにもなっていました。

 

この作品たちと向かい合って、その上で、村上さんの作品があるのだと思うと

それは一度や二度作品を見て解釈したり、感想を述べることは難しいなと

思いました。ただ、これらの咀嚼の上でご自身の考えや感性を含んでの

作品なんだと思うと、それは大変興味深いものでした。

 

展覧会のタイトルにある「スーパー・フラット」については、

パンフレットやイントロダクションで次のように述べられていました。

 

村上隆にとって「スーパーフラット」とは、平面性や装飾性といった

造形的な意味のみに限定されるのではなく、時代やジャンル、既存のヒエラルキー

から解放された個々の作品の並列性、枠組みを超えた活動そのものを

示しており、「芸術とはなにか?」という大命題に様々な角度から挑み続ける

作家の活動全体(人生)を包括的に表す広範かつ動的な概念と捉えられるでしょう』

 

最後のご本人からのメッセージに

『この世を知りたいがためにその理解をするためのレンズを「芸術」とし、

こだわってきているのです。』

という言葉があって、村上さんはたくさんの作品とかかわることで

この世の中や人生を理解して、創作することで村上さんの芸術や人生を

表現していらっしゃる。

そこに大変真面目でまっすぐで、真摯な方なんだと思いました。

 

私もこの世を知りたいけれど、分かろうと行動したり、何かを通して深く追求

するまで深く考えて向き合っていない部分があるので、

村上さんのこのような姿勢と実行して体感して、自己表現していくところだったり、

また、それが個人にとどまらず、芸術に関わる方々、目指す方々や、

日本という国にも視線を向けて提言していくところを、とても尊敬します。

 

今回を最後に日本では個展をしないという話もどこかで耳にしましたが、

今回横浜美術館で展覧会をするのは、逢坂館長の存在が大きいとのことです。

逢坂館長が以前に企画された展覧会に若い頃に大変共感されたとのこと。

出会いが時を経て、同じ想いを共有して、展覧会を一緒に作られるというのも

素敵なエピソードの一つだと思いました。

村上さんはご著書を拝読しても、人間味のある温かい方だと思います。

 

たくさんの作品を一つ一つ鑑賞するのも楽しいし、

村上さんの芸術活動を知るためにも貴重な展覧会だと思います。

 

4月3日まで。

森美術館五百羅漢図展のチケット半券提示で200円割引、

月・火・水は200円割引になるクーポンもHPにあります。

図録は作成中とのことですが、ミュージアムショップやオンラインショップで

予約受付中とのことです。

ミュージアムショップで予約した方がお得らしいです。

世界史っておもしろい!『仕事に効く教養としての「世界史」』出口治明さんの本

ラカグに出口治明さん(ライフネット生命会長)のお話を聴きに行って、

当日出版の世界史5000年史のご著書を手に入れたのですが。。。

akio422.hatenablog.com

 

5000年!

ちょっとわかんない!!

といきなり尻込みしてしまったので、まずはこちらから読んでみることに。

 

仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

 

 高校生の時に世界史専攻だったのですが、とにかく単語を覚えることに必死で

一夜漬けで試験もクリアしていたし、概要なんてほとんど理解していませんでした。

セルジューク朝とかアケメネス朝とか、オットー何世、シャルル何世、フランク王国

隋とか漢とか始皇帝とか、聞いたことはあるけど、それがいったいなんだったっけ!?

というのが実情でしたが、読んでみたら、その名前を知っていることで、

なるほどということもあり、若いときに訳も分からず覚えることも大事と思いました。

 

こちらの本では、東洋の歴史、西洋の歴史、その出会いや力関係、宗教について、

アメリカとフランスの特異性についてなど、幅広く俯瞰して描かれています。

 

すごいのが、参考文献をあげていらっしゃらないところです!

出口さんはいろいろなところでおっしゃられていらっしゃいますが、

本が大好き、歴史が大好きで、歴史の本も相当に読んでいらっしゃって、

それからが出口さんの中に取り込まれた状態になっているので。。。

この本もその知識の中から引っ張り出されて書かれたのです。

それを読ませていただけるとはすごくありがたいと思いました。

 

支配者は領土を拡大し、富を得るためにあの手この手を尽くしているのは

今も昔も変わっておらず、すごい皇帝が出てきて国が繁栄しても、

永遠に繁栄ということはない。その繰り返しなんだなというのが率直な感想。

私たちもその中で生きているので、ある日、今までとは異なる状況が訪れても

歴史の中で見たら「そんなこともあるよね」というくらいのことなのかと

思いました。

 

本の中で「過去の歴史を、GDPと人口と気候変動という視点から見つめ直す

ことも、新しい発見や既存の歴史上の常識を覆す、大きな力になるのでは」

とありましたが、今の日本の経済状況や人口の減少と高齢化見る限りでは、

今現在すでに、歴史的変化が始まっているのかもしれません。

 

また、新聞を読み比べたり、英字新聞を週1回読んでタイトルから海外の視点を

把握することもすすめられていますが、今も歴史が作り出されているということを

感じました。そして、自分はどう考えて、どう行動するか?だとも。

歴史を知ることと両輪なのかなと思います。

 

諸外国の成り立ち、宗教観を知ることで海外の動き方が理解できると

この本を読み感じましたが、中でも、歴史のあるアジアや西洋などと、

アメリカの背景や心のよりどころは異なっているということが新しい発見でした。

日本は歴史のある国で、歴史を大切にしてきて、国民の価値観も似ていて

分かり合える部分もあるのは素敵なことですが、

異なる歴史を抱えた国々の、思想や価値観の違いは歴史から成り立っていること、

それを理解することで「仕事に効く」と題名にされていらっしゃるのかなと

思いました。

 

一人の人間でも生い立ちを知ることで相手への理解が深まり、

適した接し方ができるようになるように、国と国とも同じことだと思います。

教養としての世界史。これからも学んでいきたいと思います。

いい本でした。