晶の日記

見た展覧会や手芸など。時々民藝。

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見て、服を選んで買うことを考える。

渋谷のアップリンクにて

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッションの真の代償~』を見てきました。

昨年、たまたま読んだファストファッションの本に衝撃を受けて

ぜひ見たいと思っていたので、ようやくです。

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自分が受けたショックが想像以上に大きかったので、

ブログにするまで時間がかかりました。

 

unitedpeople.jp

 

映画では時に残酷で目を覆いたくなるようなシーンが出てきますが、

これも現実、そして私たちの消費スタイルによってこのような現実が

実際に引き起こされているという意味で、二重にも、何重にも

大きいショックを受けました。

 

2013年にバングラディッシュの縫製工場の入った8階建てのビルが倒壊し、

多くの犠牲者を生んでしまった事故が起こってしまいましたし、

カンボジアでも最低賃金の引き上げを要求した労働者たちが命を失ったり、

ひどい暴行を受けるという、残酷な現実もありました。

政府や工場管理者もひどい待遇をしていますが、彼らも、低コスト短納期で

ものを作って納めなければ、仕事を与えない、よその工場やよその国へ

仕事を振るからという、追い詰められた現実があります。

 

映画の中でもありましたが、仕事が必要な人から利益を奪ってしまい、

一部の人の利益のためにたくさんの犠牲になる人がいます。

そうなってしまうシステムで洋服がつくられて、世界で売られています。

 

過酷な労働環境は工場内だけではなく、綿花を育てる農場での農薬による

健康被害や経済的な困窮を招いている仕組みや、

皮革工場から出る汚染水による皮膚病や障害などの健康被害など、

深刻な問題は他にもたくさんあります。

華やかなファッションを生産する裏側で。

 

ファストファッションの台頭により、今までシーズン毎に展示会を行い、

商品を供給してきたサイクルから、毎週新商品が店頭に出るという

短期間のサイクルに移り変わってきました。

そのため、消費者も安くて目新しい商品を次々に買い求め、

安価であるが故、飽きれば処分し、次の服を買うというように

どんどん消費を繰り返し、着ない服を増やしていきます。

 

処分された服は埋め立て処理されることになった場合は自然に還ることはできず、

有害物質を発生させることもあり、

また、別の国へリサイクル品として寄付されることもありますが、

受け入れた国では寄付された服が多すぎて自国の縫製業や縫製技術が

衰退するという現実もあるとのことです。

私は個人的に、その国の人たちが好ましい服を自分たちで作って着る機会を

他国の消費スタイルによって奪われることは大変悲しいことだと思い、

このことにもショックを受けました。

 

先進国でファストファッションを次々に買って、着ては処分する、

または整理がつかず溜め込んでしまう人たちにも、心を満たすことのできない

なにかさみしいものを感じてしまいます。

そういう意味では、この仕組みから、多くの利益を上げて得をしている人もいる

一方で、大きく損失、損害、心身の痛みなどを負っている人がいることも現実であり、

仕組みとして限界を迎えているように感じます。

 

バングラディッシュの女性労働者の方が、

「私たちの血で洋服ができています。

でも、血で作られた服を誰にも着て欲しくはないんです。」

といったことを、涙ながらに語ってくれていました。

 

消費が選べる自分は、血で作られた服を買ったり身につけることは避けたいですし、

それと同じくらい、血で服を作るような労働をする人がいて欲しくないです。

ファッション界の抱えているこの問題は大きいものですが、

自分の消費スタイルを変えていくことはすぐにでも取り掛かれるし、

そこから変えていけるようになるという思考で行動できるようにすることが

自分がすぐにできることかと思いましたし、ちゃんと考えようと思いました。

 

遠くの違う環境にいても、自分と同じように家族や大切な人がいて、

元気に安心して、毎日を幸せに暮らすことが、人として、誰もが尊重されている。

そういうことが当たり前であって欲しいです。

 

私もアパレル業界でずっと働いてきましたが(今はちょっと離れてますが)、

洋服は何人もの人がかかわって1着の形にすることができます。

そして、縫製などの技術もすぐにできるようになるのではなくて、

何年も経験を積んで良いものが作れるようになっていくので、

使い捨ての労働ではなくて、お互いに協力していいものを作り続けられるような

関係を結んでいくこともとても大切なことと思います。

映画では海外工場の話がメインでしたが、国内でも高齢化や研修生の受け入れなど

労働環境が厳しい面も多くあることと思いますし、

なんだかこう。。。利益独占ではなくて、みんなで豊かさを分かち合えるような、

その豊かさも金銭面だけではなくて技術の共有やものづくりの感性や達成感の共有

など、幅広く豊かであって欲しいと思いました。

洋服ってそういう楽しく幸せな部分も持ち合わせているものだと思うので。

 

この問題については考え続けたいと思います。

 

 

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

 

 

印象派の女性画家「メアリー・カサット」の魅力の詰まった、江國香織さんのトークイベント

横浜美術館で6月25日から、「メアリー・カサット展」が始まります。

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メアリー・カサット展 / 2016年6月25日(土)~9月11日(日) / 横浜美術館

 

カサットは印象派として活動された女性画家。

アメリカに生まれ、21歳でパリへ渡って絵を学び、生涯パリで生きました。

女性の画家がまだあまりいない時代に、印象派という革新的なグループで

表現を模索しながら、新しい技法も積極的に取り入れ、精力的に活動されました。

女性や子供のいる日常を油彩やデッサン、版画などで描いた作品は

あたたかさ、やさしさが感じられ、海外では人気があるようです。

今回の横浜美術館での展覧会は日本では35年ぶりとのこと。

 

開催記念イベントとして、江國香織さんのトークショーが9日にありました。

記者の方々への発表を兼ねているため、一般枠で応募して当選できました。

うれしい!

 

私は江國香織さんの書くものが好きです。

30歳の誕生日にエッセイをプレゼントしてもらって初めて読みましたが、

江國さんの感性や言葉のつかい方、描く描写がとても好きです。

先日ブログに書いた江國さんのご著書「日の当たる白い壁」には、

カサットの絵も紹介されていました。

大原美術館の2つの絵―江國香織さん『日のあたる白い壁』 - 本と共に暮らす晶の日々

 

私はそちらでカサットを知ったのですが、学芸員の沼田さんが

今回江國さんにお願いしたのは、こちらの本に取り上げられていたからですと

おっしゃられていたので、それもとてもうれしかったです。

 

江國さんは本からのイメージ通りでした。

私が思っていたよりもすごくかわいらしい方でした。

飾らない感じで、まっすぐにものを見て捉え、自分の表現で話し、

言葉や語彙が豊富で、豊かな感性がすごく伝わってくる方でした。

さすが、小説家!と思ってしまう自分の語彙の貧困さにあきれます。。。

 

イベントでは沼田さんが展覧会の作品や見どころをご紹介してくださった後、

お二方の対談でした。

美術館について、先述の「日の当たる白い壁」について、カサットの作品や

人間性についてなど。。。楽しいお話がたくさんでした。

 

カサットは油彩以外にも、銅版画や鉛筆画などの作品も残していて

絵に対してたくさんチャレンジもして、積極的でした。

女性が絵を描くということでお父さんにも激しく反対された時代の中で、

単身パリで好きな絵を描き続け、イタリアやスペインで巨匠たちの絵を模写したりと

努力を積み重ね、サロン出品を目指しました。

その後、当時前衛的で革新的な印象派に所属し、作品を発表したり、銅版画に熱中、

また、パリで見た浮世絵版画展で感銘を受け、作品に積極的に取り入れ、

ジャポニズムの画家としても名前があがる存在とのことです。

 

そんなカサットは新しい時代を切り開いたエネルギッシュな女性、

自立していて、バイタリティがすごくある女性だったようです。

江國さんはその他にも不穏なところを感じると言っていましたが。

 

カサットはパリに来て画家のドガと親交があり、ドガから教えを受けたり、

印象派に誘われて一緒に活動をしたり、銅版画を共に研究したり、

また、ドガの最後はカサットが看取ったとのことでした。

ドガとの関係は?恋愛関係だったのでは?

カサットは晩年ドガの手紙を全部焼いてしまったらしいです。

それは。。。隠ぺい工作では?やっぱりあやしい!(笑)

など、女子トークのような内容もあったりして、カサットに親しみを感じました。

 

皮肉屋で攻撃的なドガとどうして付き合っているの?と聞かれたカサットは

「それは私が自立しているからよ」と答えたそうです。

結婚に頼ることなく自分の意志で自立した生き方を貫いたカサットだったようです。

 

江國さんは「日の当たる白い壁」の中で23人の画家を紹介し、

その中に女性は、カサット、オキーフ小倉遊亀の3人でした。

意識していなかったそうですが、3人とも女性の日常を題材にしても

甘くなりすぎず、叙情に流されず、明晰な視線が感じられる。

女おんなしてなくて、知的であり、しっかり自分を主張できるけど、

とても女性らしく、女性を謳歌した人たちでもあったという点が共通している。

と振り返って述べられていました。

 

他にもいろんな貴重なお話を聴かせていただきましたが、

カサットのような女性であることを謳歌しながら、自立している女性というのは

今からの時代に合っているように感じます。きっと共感できる女性も多いと思います。

このタイミングでカサットの作品が見られることは幸せです。

 

本物の絵は印刷物とはまた違う魅力があるとのことなので、肉眼で見ることが

楽しみです。展覧会でカサットを感じてこようと思います。

 

展覧会の準備に4年もかかるとは知りませんでした。

学芸員の沼田さんの熱意のこもった展覧会が、今からとっても待ち遠しいです。

落ち着いて上品にお話される沼田さんの中に、熱い想いがこもっていたので

とても素敵だなと思いました。良い作品を日本に呼んでいただけてうれしいです。

 

6月25日(土)~9月11日(日)横浜美術館にて。

※4月4日までは先行ペア券2400円が販売されていて、1人400円もお得です!

 

京都展は京都国立近代美術館にて。

9月27日(火)~12月4日(日)

『村上隆のスーパーフラット・コレクション』を見に、横浜美術館へ

2月は体調を崩したりして余裕がない毎日だったので、久しぶりに更新します。

 

1月に五百羅漢を見に行って村上隆さんの魅力に興味が出てきて

横浜美術館で開催中の展覧会を見に行ってきました。

 

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yokohama.art.museum

(メイキング映像が立ち上がるので、音が出ます。)

 

これ全部、村上さんのコレクションなんて!というくらい圧倒的な作品数です。

縄文時代の土器をはじめ、北大路魯山人の器や白隠禅師や曽我蕭白の絵などの

古い時代のものから、今現在ご活躍中のアーティストの作品まで、時代も国も

ジャンルも超えて、小さいものから大きいものまで、多種多様な作品が

村上さんに選ばれて所蔵され、この期間に横浜横浜美術館で公開されています。

 

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階段スペースやエントランスにも大きい作品がたくさんでした。

初めて行ったので、常設なのか企画展なのかよく分からずに

見ていました。。。

メイキング映像を見て、あの大きいのもコレクションだったの!?と

ビックリ。

 

奈良美智さんもいっぱい。

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また、大きいヌードモデルの人形(?)のモデルの周りにイーゼルが並び、

絵を描くスペースとなっており、用意された画材で自由に描くことで

展覧会に参加することもでき、そこからまた新しい作品が日々生まれる

ようにもなっていました。

 

この作品たちと向かい合って、その上で、村上さんの作品があるのだと思うと

それは一度や二度作品を見て解釈したり、感想を述べることは難しいなと

思いました。ただ、これらの咀嚼の上でご自身の考えや感性を含んでの

作品なんだと思うと、それは大変興味深いものでした。

 

展覧会のタイトルにある「スーパー・フラット」については、

パンフレットやイントロダクションで次のように述べられていました。

 

村上隆にとって「スーパーフラット」とは、平面性や装飾性といった

造形的な意味のみに限定されるのではなく、時代やジャンル、既存のヒエラルキー

から解放された個々の作品の並列性、枠組みを超えた活動そのものを

示しており、「芸術とはなにか?」という大命題に様々な角度から挑み続ける

作家の活動全体(人生)を包括的に表す広範かつ動的な概念と捉えられるでしょう』

 

最後のご本人からのメッセージに

『この世を知りたいがためにその理解をするためのレンズを「芸術」とし、

こだわってきているのです。』

という言葉があって、村上さんはたくさんの作品とかかわることで

この世の中や人生を理解して、創作することで村上さんの芸術や人生を

表現していらっしゃる。

そこに大変真面目でまっすぐで、真摯な方なんだと思いました。

 

私もこの世を知りたいけれど、分かろうと行動したり、何かを通して深く追求

するまで深く考えて向き合っていない部分があるので、

村上さんのこのような姿勢と実行して体感して、自己表現していくところだったり、

また、それが個人にとどまらず、芸術に関わる方々、目指す方々や、

日本という国にも視線を向けて提言していくところを、とても尊敬します。

 

今回を最後に日本では個展をしないという話もどこかで耳にしましたが、

今回横浜美術館で展覧会をするのは、逢坂館長の存在が大きいとのことです。

逢坂館長が以前に企画された展覧会に若い頃に大変共感されたとのこと。

出会いが時を経て、同じ想いを共有して、展覧会を一緒に作られるというのも

素敵なエピソードの一つだと思いました。

村上さんはご著書を拝読しても、人間味のある温かい方だと思います。

 

たくさんの作品を一つ一つ鑑賞するのも楽しいし、

村上さんの芸術活動を知るためにも貴重な展覧会だと思います。

 

4月3日まで。

森美術館五百羅漢図展のチケット半券提示で200円割引、

月・火・水は200円割引になるクーポンもHPにあります。

図録は作成中とのことですが、ミュージアムショップやオンラインショップで

予約受付中とのことです。

ミュージアムショップで予約した方がお得らしいです。

世界史っておもしろい!『仕事に効く教養としての「世界史」』出口治明さんの本

ラカグに出口治明さん(ライフネット生命会長)のお話を聴きに行って、

当日出版の世界史5000年史のご著書を手に入れたのですが。。。

akio422.hatenablog.com

 

5000年!

ちょっとわかんない!!

といきなり尻込みしてしまったので、まずはこちらから読んでみることに。

 

仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

 

 高校生の時に世界史専攻だったのですが、とにかく単語を覚えることに必死で

一夜漬けで試験もクリアしていたし、概要なんてほとんど理解していませんでした。

セルジューク朝とかアケメネス朝とか、オットー何世、シャルル何世、フランク王国

隋とか漢とか始皇帝とか、聞いたことはあるけど、それがいったいなんだったっけ!?

というのが実情でしたが、読んでみたら、その名前を知っていることで、

なるほどということもあり、若いときに訳も分からず覚えることも大事と思いました。

 

こちらの本では、東洋の歴史、西洋の歴史、その出会いや力関係、宗教について、

アメリカとフランスの特異性についてなど、幅広く俯瞰して描かれています。

 

すごいのが、参考文献をあげていらっしゃらないところです!

出口さんはいろいろなところでおっしゃられていらっしゃいますが、

本が大好き、歴史が大好きで、歴史の本も相当に読んでいらっしゃって、

それからが出口さんの中に取り込まれた状態になっているので。。。

この本もその知識の中から引っ張り出されて書かれたのです。

それを読ませていただけるとはすごくありがたいと思いました。

 

支配者は領土を拡大し、富を得るためにあの手この手を尽くしているのは

今も昔も変わっておらず、すごい皇帝が出てきて国が繁栄しても、

永遠に繁栄ということはない。その繰り返しなんだなというのが率直な感想。

私たちもその中で生きているので、ある日、今までとは異なる状況が訪れても

歴史の中で見たら「そんなこともあるよね」というくらいのことなのかと

思いました。

 

本の中で「過去の歴史を、GDPと人口と気候変動という視点から見つめ直す

ことも、新しい発見や既存の歴史上の常識を覆す、大きな力になるのでは」

とありましたが、今の日本の経済状況や人口の減少と高齢化見る限りでは、

今現在すでに、歴史的変化が始まっているのかもしれません。

 

また、新聞を読み比べたり、英字新聞を週1回読んでタイトルから海外の視点を

把握することもすすめられていますが、今も歴史が作り出されているということを

感じました。そして、自分はどう考えて、どう行動するか?だとも。

歴史を知ることと両輪なのかなと思います。

 

諸外国の成り立ち、宗教観を知ることで海外の動き方が理解できると

この本を読み感じましたが、中でも、歴史のあるアジアや西洋などと、

アメリカの背景や心のよりどころは異なっているということが新しい発見でした。

日本は歴史のある国で、歴史を大切にしてきて、国民の価値観も似ていて

分かり合える部分もあるのは素敵なことですが、

異なる歴史を抱えた国々の、思想や価値観の違いは歴史から成り立っていること、

それを理解することで「仕事に効く」と題名にされていらっしゃるのかなと

思いました。

 

一人の人間でも生い立ちを知ることで相手への理解が深まり、

適した接し方ができるようになるように、国と国とも同じことだと思います。

教養としての世界史。これからも学んでいきたいと思います。

いい本でした。

日本橋三越『下田直子 ハンドクラフト展』を見に行ってきました。

先日地下鉄の中の広告で見て気になっていた、

日本橋三越で開催中のこちらの展覧会を見に行ってきました。

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下田直子 ハンドクラフト展 | 三越 日本橋本店 | 三越 店舗情報

 

平日の昼間でしたが、たくさんの手芸好きな方々で会場は混雑していました。

手芸が愛されていることを改めて実感。

 

下田直子さんは、1953年に東京に生まれ、文化服装学院を卒業後、

ニットデザイナーを経て、渡米、帰国後にニット作品が大好評を博し、

以後、手芸家として不動の地位を築かれたとのことです。

1993年福島県立美術館で開催された「現代の染織」展で、

現代作家の一人にも選ばれたそうです。

芹沢けい介さんや志村ふくみさんとともに選ばれたとのこと。

実は下田直子さんのことを存じ上げませんでしたが、業績の偉大さを感じました。

 

今回の展示作品はとても素晴らしかったです。

ニットの洋服やバック、ストール、クッション、がまぐちやボタンなどの小物。。。

様々な種類の品に、細かく繊細な手技がこれでもかというくらい詰め込まれていて、

技術もすごいと思いますが、私はなによりもデザインや色彩のセンスの良さが

とっても素敵だと思いました。

そのイメージを表現できるほど、自由自在に作成できる技術力があってこそですが。

 

ニットもモチーフをこんなに楽しくつなげ合わせて、なんて自由!

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このボーダーカーディガン、欲しいです。

散りばめられているボタンがまたとてもかわいらしいのです。

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私は特にフェルトの作品が好き!

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展示会場には、デザインソースとなるコラージュやコレクションもありましたが、

「古いものは見ない」といったようなコメントが書かれていて、

常に新しいものを取り入れる新鮮な感性があってこその作品なのかなと感じました。

 

前職で一緒に仕事をしていたパタンナーさんが

「編み物は布帛のパターンとは違う面白さがあって、最近手編みにはまってるの」

と話していたことを思い出し、編み物の表現を楽しめた展覧会でした。

 肩線とかダーツとか、袖つけとかの制約もないし、ファスナーだってくっつけられる。

クリエイティブだなと思いました。

 

個人的には、JAMIN PUECHのバッグとか、la droguerieやエル・ミューゼにある

ボタンやビーズやパーツを見たときのような、ワクワク感、感動を感じて

大好きなものがまた増えました。

 

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売店は同じように感じた方々でごった返して、買い物熱が高くなっていました。

 

三越日本橋本店 新館7階にて、2月15日までです。

 

大原美術館の2つの絵―江國香織さん『日のあたる白い壁』

先日、国立新美術館で展示中の大原美術館のコレクションを見て

国立新美術館『はじまり、美の饗宴展―すばらしき大原美術館コレクション』 - 本と共に暮らす晶の日々

 

江國香織さんのこちらの本を改めて読みました。

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日のあたる白い壁 (集英社文庫)

日のあたる白い壁 (集英社文庫)

 

作家の江國香織さんが23点の絵について書かれています。

ゴッホセザンヌユトリロ、ボナール、オキーフ・・・・

小倉遊亀さんの作品も!

たくさんの絵を今までご覧になって、文献も読まれて、想いをはせて、

江國さん の感性で書きつづられたこちらの本は、

作家の個性や描かれた背景が想像できるような、身近で親しみ深くなるような

そんな素敵な本です。

それぞれの作家の代表作とはまた異なった表情の作品が取り上げられていたりして、

読むとますますその作家のことを知りたくなるし、他の作品も見たくなります。

 

こちらに、大原美術館のコレクションが2点紹介されています。

まず、表紙は児島虎次郎さんの「睡れる幼きモデル」。

(上の写真です)

幼い女の子の表情、ドレス、室内の調度品それぞれの質感や色合いが

懐かしさを感じるあたたかい作品。

こちらの絵が描かれたのは大原美術館のコレクションの第1号である「髪」

を書かれたアマン・ジャンに初めて会い、その作品を購入した1912年に

描かれた作品とのことです。

 

もう一つは、カリエールの「想い」

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(本から撮影しました。)

カリエールはフランスの画家で、他の作品にも共通するのですが、

対象の周りが靄がかかったように背景と一体化しているような作品が多いようです。

ロダンと親交が深かったとか。

作家については多くを知りませんが、描かれた女性の物憂げな表情、

見方によっては幸せそうにも、なにかを考えているようにも見えるようなこの表情と

ポーズに惹かれるものがあります。

 

江國さんは「波長の合う絵」とも「心の中に飼ってしまう」とも表現しています。

このたとえが、また絵の魅力を深いものにしているように感じます。

 

他の作品についても、感性豊かな江國さんの絶妙な表現でつづられています。

数年前に読んだはずなのに、今読むととっても新鮮。

気になる絵を見るために旅に出たり、作品集をめくりたくなる

幸福感のあふれる本でした。

 

 

国立新美術館『はじまり、美の饗宴展―すばらしき大原美術館コレクション』

乃木坂(六本木)の国立新美術館に、倉敷大原美術館のコレクションが

やってきました。

さっそく見に行ってきました。

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hajimari2016.jp

大原美術館倉敷の実業家・大原孫三郎さんが1930年に、

西洋美術を紹介するための日本で初めての本格的な美術館を創設しました。

孫三郎さんは倉敷紡績倉敷絹織などの繊維業の本業以外にも、

電力、金融、新聞などの諸事業にも手を広げ、病院や研究所の設立など、

社会貢献や社会福祉にも尽力されたと言われています。

 

芸術家への支援もされており、

画家の児島虎次郎さんのヨーロッパ留学を支援し、

また、児島さんが海外の芸術を日本に持ち帰り、

日本の人々に見せたいという願いに共感し、金銭的な支援をし続けました。

そのお二人の収集した作品が大原美術館のコレクションの始まりです。

アマン=ジャンの「髪」という作品が第1号で、今回の展覧会でも見られます。

 

孫三郎さんは民藝運動の創始者である柳宗悦さんのことも支援し、

日本民藝館大原美術館の工芸館の創設にも力添えされました。

大原美術館には民藝作家の作品も多くあり、浜田庄司河井寛次郎、富本憲吉、

棟方志功、バーナードリーチ、芹沢けい介らの作品を個性に合わせた空間を

わざわざ作って展示されています。

元々は大原家の米蔵で、芹沢けい介さんによって改装されたとのこと。

こだわりが伝わってきます。

 

孫三郎さんの後を継いだ総一郎さんの代で、近現代の作品や日本人作家の

作品の収集も増えて、別館に多く展示されています。

総一郎さんは受け継がれた事業を大きく発展させ、日本の繊維業界にも

大きく尽力されています。(今のクラレです。)

お仕事と美術館で精力的な活動をされる傍ら、音楽や美術を愛し、

ご家族を大切にされていたとのこと。素敵です。

 

児島虎次郎さんの作品と彼が個人的に蒐集してた古代中国の美術品、

また、イランやエジプトなど古代オリエントの美術品は

アイビースクエアの中にある趣のある煉瓦の建物(倉敷紡績の元倉庫)

に展示されています。

 

という話を、

21歳で1人で倉敷に行った私は、シルバーガイドのおじいさんから聞きました。

その時、大原美術館にかかわった方々の夢の詰まった想い、

それを支える決断や行動、そして事業も芸術もそれぞれ真摯に取り組み

結果を出していくエネルギーと行動力、意志の強さなど。。。

人として、本当にかっこいいと思いました。

 

そして、そうして全力で集められてきた大原美術館の作品を見ていると、

古代から現代までの作品について、時代もジャンルも、国や人種の違いも

全てを含んで芸術は存在し、今をつくり、それが過去にもなっていくと

素直に感じることができます。

 

「この時代のこんな絵が好き」とかっていう好みもあるかもしれませんが、

「この時代にこういう人がいた。こういう表現をした。」ということが

今現在へ連なっているということに思いを馳せ、そこから気づきを得たり、

想像が膨らんでゆくことが、美術を味わう魅力の一つであると思います。

 

大原美術館は好きで何度も訪れていますが、きっと近年仲間入りした

今を生きる作家の作品も増えていることと思います。

今回、館を代表するような作品が多くやってきていますが、

その間、倉敷ではどんな展示をやっているのでしょう?

きっとそれはそれで逆手にとって、おもしろいことをされていらっしゃることと

思います。

 

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すごい前のことですが、大原総一郎さんの本を読んで、とてもカッコイイと感激して

友人に貸したらまだ返ってこないので。。。

会場でまた買いました。

本は返してくれなくていいので、それくらいかっこよくなってくれたら満足です。

 

大原総一郎―へこたれない理想主義者 (中公文庫)

大原総一郎―へこたれない理想主義者 (中公文庫)